MMORPGに関する考察の第2回では、MMORPGとはどうあるべきかの道筋を知るために、TRPGとの関連について述べる。TRPGとはTabletalk Role Playing Gameの略称であり、その歴史はMMOよりも古い。またRPGの元祖とでも言うべき存在であり、コンピュータを用いたRPGよりも前から存在してきた。

TRPGについて軽く触れておく。TRPGにおいては一人のプレイヤーは一人のキャラクターを演じる。これはMMORPGと同じである。しかし同時に参加できるプレイヤー(=キャラクター)の数は通常2〜6人程度であり、またプレイヤーの他にゲームマスターと呼ばれる存在が必須となる。なぜならば、TRPGはコンピュータを用いたゲームではないからである。
あるキャラクターが「○○をしたい」といえば、ゲームマスターがそれが可能かどうか、また成功するかどうかを判断し結果を伝える。成功か失敗かの判断は公正さを求めるために、サイコロ(ダイス)を用いて判定することが多い。
TRPGにはルールブックという文章が存在し、その記述に従ってゲームは進行する。といってもそこに載っているのは世界観と判定方法などごく基本的なことであり、実際の運用はゲームマスターとプレイヤーに任せられている。通常ゲームを始める前にゲームマスターが「シナリオ」と呼ばれるものを作成し、それに則ってゲームを楽しむことになる。

このTRPGは歴史的に古いだけに、完成度という点においてMMOより秀でているのは間違いない。またMMOとの共通点も多いことから、TRPGに触れることにより完成度の高いMMOを想像できないか、という視点からTRPGとMMORPGの特徴を述べてみる。

TRPGの特徴的な点としては、やはりその自由度の大きさであろう。コンピュータを用いてしまうとどうしてもその自由度には制限がかかってしまい、誰がやっても同じ道筋を辿ることになってしまうのだ。TRPGにおいてはそこを制限するのはゲームマスターの作成した「シナリオ」であり、その「シナリオ」自体いくらでも書き換え可能なのである。

自由度というものは時折MMORPGでも特徴として語られるものである。もちろんそれはコンピュータRPG(DQ,FFなどのことでありこの文章中ではMMOを含まない)と比較した上でのことである。TRPGで言われる「シナリオ」はMMOでは「クエスト」と呼ばれるものにあたるだろう。たいていのMMOにはクエストが多数存在し、またパッチなどによってクエストの数は増殖するものである。
言い換えれば、MMOにおいて自由度を語るならばクエストの充実が不可欠である、ということになる。無論、量だけではなくその質も問われる。

現在、日本におけるTRPGでは、「制限された自由度」をプレイヤーが求める傾向にある。これはゲームシステム的にあらかじめキャラクターが取れる行動の範囲が決められている、ということである。例えば「キャラクターは必ず正義の使途であり、悪を倒さなければならない使命を持つ」などといったものがあげられる。コンピュータRPGにおける主人公のような態度が好まれるのだ。現在の若者がそのようなコンピュータRPGに触れてきたことを考えればこの流れは仕方の無いことかもしれない。またそのようなこともあり、シナリオがどうしてもマンネリ化しつつある。面白いシナリオを作るには、自由度を制限されてしまうとどうにも身動きがとりにくい。

さて、これを踏まえてMMORPGはどのようになればいいのか。つまるところ自由度を維持しつつ、キャラクターに何らかの目的意識を持たせることができればいいのではないか、ということになる。もちろんその目的は「より高いLVになる」などといったことではない(そんなものはすでにどのMMOにも存在する)。具体的には次回述べることにする。

○以下補足事項

・RPGにおける自由度
本書で述べた自由度が大きい、とはそこに何も用意されていないことではない。RPGにおける自由度とは、ある事柄に関してとれる行動の自由度、である。「ある事柄」の部分は当然用意されなければならずここが「シナリオ」または「クエスト」である。

・TRPG「Race」
http://easy.to/race
私が制作にほんの少し関わったRPGである。大阪大学RPG研究会によって制作され、現在はそのサポートはRace補完委員会によって行われている。TRPGの入門に、とはいかないが手頃な値段である・・・(宣伝)

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